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占星術とアロマをやっている緋彌華(himika)の雑記帳です。
by himika-s
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ヒマラヤでの見知らぬ犬のガイド
2004年 10月 20日 *
あれから、もう何年もたってしまっているのですけど
ダンナとふたりで、ネパール、インド、チベットなどを旅したときに
いまでも忘れられないことがあります。

それは、ネパールでのできごとでした。
ガイドなしで、ヒマラヤのトレッキングを
行っていたときの話です。

いまとなっては正確な場所は忘れてしまったのですが、
ヒマラヤに入ってから、すでに何日かが過ぎていた頃でした。

その時は、アンナプルナというコースを回っていたので
他のトレッキングコースと比べれば
比較的おだやかに感じる道が多く
山奥の村から村を歩いているという道がメインでした。

でも、その日は、うっそうとした森の中を
通って行かなければならず
まだ日も高く、晴れているというのに
その森の中は、かなり薄暗くて
私は少し不安な気持ちになったのを覚えています。

その森に足を踏み入れる前に、いま来た道を振り返ってみると
丘の上に大型の真っ黒の毛並みをした犬が
私の方を見つめている姿が目に入りました。

距離が離れていたし、毛並みが黒かったので
どんな目をした犬かそのときはわからなかったのですけど
なんとなく、落ちついた優しさを感じさせてくれる犬でした。

そんなことを思って、私もその犬を見つめていると
その犬は、私の方に勢いよく走り寄ってきたのです。
近くで見ると、思ったとおりの優しい澄んだ目をした犬でした。

そこで、私はその犬に、

「この森をダンナとふたりで抜けなければいけないの。
暗くて道に迷うかもしれないし、変な人に会っても怖いから
もしよかったら、森を抜けるまで護衛をして欲しいの。」

と、お願いをしてみました。

すると、その犬は、私の言っていることがわかったのか
私たちの先を歩き始めたのです。
そして、森を抜けるまで、ずっと私たちの側で
ほんとうに護衛をしてくれているように、一緒に歩いてくれたのでした。

暗い森を抜けると、そこは、いままでとはうってかわって
広々とした明るい草原が広がっていました。
ヒマラヤでは少し歩くと
すっかり景色が変わるということがよくあるのです。

すると、その黒い犬は、今度はまるで自分の役目を終えたかのように
何度も振り返りながら、いま来た道を帰っていったのです。

本当は、その犬を日本まで連れて帰りたいと思ったくらいに
その時に大好きになってしまったのですけど
どう考えても、窮屈な日本で暮らすより
大自然の中のヒマラヤでそのまま暮らした方が
その犬にとっては幸せに違いないので、
そのまま帰って行く犬を見送ることにしました。

その犬には、私は日本語で話しかけたので
言葉が通じたとはとうてい思えないのですけど
少なくとも、私の気持ちはすぐに伝わったのだということは
いまでも感じることができます。

そして、ときおり、あの犬どうしてるかなぁと
いまでも思い出してしまいます。
だって、わたしにとっては、大切な恩人ならぬ、恩犬なのですから。

by himika-s | 2004-10-20 23:25 | 旅の記憶 *